12月26日の津波が発生してからおよそ2ヶ月。タイ・カオラクの村には、4000人もの方々があっという間に亡くなった大惨事が起きたとは思えないほど穏やかな雰囲気が戻って来ています。幸運にも被害をまぬがれたホテルは通常通り営業しているし、観光客の姿もチラホラ見かけます。街の食堂に立ち寄ると「津波はもう嫌だね!」とか言いながら、みんな陽気に迎え入れてくれて美味しい料理を出してくれます。海水は円やかで心地よく、ヤシの木もそよそよと風に揺られて気持ち良さそうです。
でも、もちろん爪痕は村に深く刻まれています。村の中心部を抜けて海沿いの街を北上すれば、崩れ果てた建物がいまだに放置されています。何千人もが、家財道具全てを流されました。被災地キャンプに行けば、両親を失ったのでしょうか、目が虚ろで自発性に欠けてしまった子供に出会い目頭が熱くなります。以前として、家族が行方不明のままの人もたくさんいるのです。
そんな状況なのにタイ人は笑顔で前向きで気持ちがおおらかで、とても親切にしてくれるのには本当に頭が下がります。この国は仏教が浸透しているせいか、皆さん本当に仏陀みたいな慈悲深い心や「助け合い」の精神があるなぁと感心してしまいます。被災地にお手伝いに行けば、私たちボランティアを笑顔で迎えてくれ、なけなしの材料で夕飯を作ってくれたりするのです。
表面的には普段に近い生活で皆さん明るく強くても、村の生活を再生して行くために乗り越えなくてはならない問題は山積みです。一番の問題は経済をどう立て直すか、ということ。カオラクの主な収入源は「観光業」と「漁業」ですが、その両方が津波で大打撃を受けてしまいました。政府からの緊急支援金も打ち切られてしまった今、村の経済をどうやって復興していくのか、それまでの期間は何を糧に生活するのかが、村の人たちの悩みです。(村に既にある自然資源を利用したエコ・ツーリズムの拡張など新しいアイデアも出ているので期待したいところです)
もう一つの大きな問題はガバナンスの問題です。政界トップの人たちが義援金を着服して逃げてしまったり、前から住んでいる住民の土地の権利を尊重せず一方的に立ち退きを命じたり。「助け合いの精神を持っているタイ人」とはだいぶ矛盾する許しがたい行動なんですが、所詮タイも第三世界…. 場所によってはまだ民主政治がしっかりと根付いていないところがあるんです。津波被害対策に限ったことではありませんが、公正で透明性の高いガバナンスを実践していくことが国を健全に保っていくために急務だと思いました。(今日のニュースでは、アフリカ諸国でも「ガバナンス」が最重要課題だと言っていました。)
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