タイは10月が学校のおやすみの時期。娘もまるまる一ヶ月、幼稚園がおやすみということで、タイのファーム・トリップに出かけることに。まずは、PanyaとPunPunというオーガニック・コミュニティーへ。前も行った事があったけど、もっとゆっくり滞在してみたい、と一週間の日程で。
Panya(パンニャ)はタイ語で「智慧」、Pun Pun(パンパン)は「1000の種類=多様性」という意味。ガーデニングの手伝いをしたり、畑や森でとれた食材を使いオープン・キッチンで料理を楽しんだり、初めてのホームスクーリングを体験したり、大自然の中で子どもたちとのんびりした休日。極上のひとときでした。
一緒に行った、スムートとファレスティンは、ドイツ人/パレスチナ人のミックス。テラとは兄弟のように仲良しだったり、ケンカしてみたり。言葉が通じないのはあまり関係ないみたい。カタコトの英語とフィーリングで、思いっきりコミュニケーションしてました。
テラはフラフープを大特訓中!フラフープ選手権に出れるぞ、こりゃ。
中国系タイ人のおばさまもボランティアに来ていまた。この手のコミュニティーに、年配の方が長期滞在されるのは珍しいこと。「世界中のオーガニック・コミュニティーを訪問中よ。イスラエルのKibbutz Lotanってところが、良かったわ。」
そして今回の一番の大きな収穫は、Seed Saving(種の保存)の方法を学んだこと。Pun PunのリーダーのJon Jandi(ジョー・ジャンダイ)はタイでは有名な環境活動家で、「種はお金よりも何よりも大切な、命であり宝であり安全保障」というのが持論。ますます経済が逼迫し、いつお金が紙切れになってしまってもおかしくない、そして実は、食べ物が一握りの企業に思うように独占されてしまっている今、「食べ物の大元である種を保存し、保管し、シェアしていく」ことは、とても大切なことなのです。
こちらジョー氏のTED talk。Truly Inspirational!
僕は貧しい家に生まれ、都会に行ったら生活が楽になると信じて バンコクに働きに出た。 でもなんでこんなに働いているのに、生活はこんなに大変なんだ? なんでみんな人生を大変に複雑にしてしまっているんだ?と思った。
僕はまた田舎に戻ることにした。 そしてそこら辺のもので家を建て、食べ物を育て 衣服を作り、薬を作った。 都会では一日8時間働いていたのに、ここでは一日2時間だけ。 でもそこらへんのもので家は建てられるし、畑から食べ物もとれる。 お金はないけど、楽して生きていける。 人生って、大変なもんじゃない。 すごくイージーで楽しいものなんだ! 今、僕は何のなやみもないし、とても自由だ。 お金はないけど、必要なものは全てありあまるほどある。
そう。食べ物。家。衣服。薬。 生きるために不可欠なこれらのものを、誰でも簡単に手軽に手に入れられる。 それが文明というものだ。 でも今、ぼくらが生きている世の中は文明のかけらもない。
僕らはいつでも人生を複雑にするように教えられてきたんだ。 ねずみだって、鳥だって、一日か二日で巣を作る。 それなのに人間は、何もかも難しくしすぎてしまってきた。
だからPun Punというラーニングセンターを作った。 人生はとてもイージーで苦労しなくてもいいことを学ぶために。 自分自身やまわりの人や自然と、もう一度つながるために。 そうすることでお金に頼らず、幸せになれる、という 当たり前のことを広めて行くために。
特にPun Punで力を入れているのが、Seed Savingだ。 seed is food food is life no seed, no life no seed, no freedom no seed, no happiness.
種とは食べもの。 食べ物とは命。 種がなければ、命がないし、 種がなければ、自由じゃないし 種がなければ、幸せはありえない。
僕はただ普通のことを言っているだけだ。 僕には何の悩みもないし、人生は朗らかで希望に満ちている。 お金がなくても家はたくさんもっているし、種もたくさんある。 これは誰にだって可能な道なんだ。 あとは、自分自身がどう選択するかだけだ。
わたしもタイでファーミングを始め、ピージョーの、そしてPunPunのビジョンにますます共鳴し、モンサント社の食の独占などの問題に関心が高まる中、「Seed Savingって、あまり聞かないけどとても大切」と思うようになりました。
この種の中に、命があり、その命を頂くことで私たちも生かされているんだ。
でも実は99%の市販の種は、企業が独自に交配させたF1と呼ばれる種。ひどいものには特定の農薬や土までも必要とするものがあったり、最近では(まだ割合は少ないと言えども)遺伝子組み換えの種もふくまれています。操作された種を「買う」んじゃなくて、「保存する」「みんなでシェアする」ということが、今とても大切。
なのにシード・センターってわりと少なくて、PunPunのように、タイに伝統的に伝わる種を保存し広め、つまり食を自分たちの手に取り戻そうと地道に活動しているところって、そんなにないんです。というわけで、今回のステイのハイライトがSeed Savingを学ぶ、ということでした。
教えてくれたのは、25歳のにーちゃん、Pop(ポップ)君。バンコクの大学を卒業し、映像制作の仕事をしていたシティー・ボーイが、ジョーのトークを聞いて感激し、涙を流して、都会の全てを捨ててこの田舎のファームに引っ越して来たのが2年前(そういう大胆なライフシフトをした若者が、PunPunにはとても多い)。僕のオフィスにようこそ!と案内してくれました。
種の保存法:その1 キュウリの場合 収穫は熟れるまで、待つ。下の写真だと、まだ若すぎ。黄色になるまで、待つのが良い。ただし落ちて腐ってしまったり(その場合は、自然にその場所でまた生えるからいいのだけれど)、かびたり、虫に食べられたりする危険性も。だから収穫する時期は、常に微妙。早めに収穫してほしておくということもできるけど、やはり自然に任せるのが一番。
とってきたら、種をとり出す。熟れている場合は、ぶっちゅっとつぶれて、自然に出ることが多い。写真は、なすの種をスプーンでほじくり出しているところ。
ぬるぬるのジェリーが付着している場合は、水にひたして数日間置き、ぬるぬるをとる。
その後、水を入れては付着物を取り除きという作業を繰り返して、こんな風に少しずつ綺麗にしていって、種だけになったら、
日陰でかわかす。日なただと焼けてしまう可能性があるので、注意。
これで冷蔵庫に入れて保管しておけば、3〜4年は持つ。もちろん新しい種のほうがベター。トマト、なす、かぼちゃ、ウリ系の植物など、種をぬるぬるが包んでいる植物は全てこの方法で、種を保存。
種の保存法:その2 チリの場合 これも、きゅうりと同様「一番熟れている時に収穫」→「綺麗にして」→「保管」という流れ。ただしぬるぬるがない分、水につける、ということはしなくて良い。ただ、種が小さいので、とるのが非常に大変なので、Pop君はこんな風に、ハサミを入れたあと、ブレンダーにかけて種をとりやすくして、それから冷蔵庫に入れて保管しているそう。この冷蔵庫の中には、びっちりところせましと種,たね、タネ!!!
おくら、豆など、も基本的には同じ。食べられる時を過ぎても、これぐらい乾燥するぐらいまで、収穫を待つ。
種の保存法:その3 レタスの場合 レタスやキャベツなど葉ものは、実の中に種ができる上記のような植物とは違い、花の中に実ができる。だから葉っぱを収穫したあとも、茎はそのままにとっておく。そうすると、花が咲き終わったあと、こんな風に種ができるので、それを収穫。いやぁー単純なことなのに、知らなかった!
PunPunは素晴らしくって、こうやって独自に保存した種を無料で(またはドネーションで)配っているんです。欲しい種の種類を書いて、返信用の封筒を送れば、誰でも送ってくれます。ただし「必ず植えて、オーガニックに育てること」「また種を保存すること」が条件。一ヶ月、50〜100通のオファーがあり、日に日に増えているとか。また私のように特にシード・セーヴィングを習いたいと来る人はまだまだ少ないけれど、女性を中心にぼちぼち増えてるよ、と言ってました。「あとSeed Savingで大事なことは、植物をよく観察すること。それから、まめさ。たいして難しいことではないけど、ラベルをはったり、ちゃんと保管したり、日々少しずつやり続けることが健康な種をつないでいく秘訣だね。」
将来的には種の販売も考えているそうですが、「一度しか買わないで下さい」と袋に書こう!と話しているとか。ファーマー一人一人がシード・セービングの大切さを理解して、種のネットワークを育てる、というのがPunPunの願いなのです。
Pop君、言ってました。「一番大切なのは、やってみること。失敗して、そこから学ぶから。ピージョーが僕にすべてを教えないのは、僕が自分自身で学ぶ機会を奪わないようにするために(He leaves space for me to learn)。僕はなんの知識も経験もなくて、2年間こんなことしてて、人に教えられるぐらいまでなったんだよ。だから誰でもできる事だよ!(I can do without any background, so anyone can do it!)」
彼は、仏教に傾倒していて、そして大のロック好き。お互いの夢を語り合いながら、哲学的な話もしながら、もくもくと種とひたすら向き合った2日間。人生の中でもキラキラ光る真実の時で、新しい交流が芽生えたことが何より心の糧となりました。わたしもこれから植物を育てる際、Seed Saving。必ず地道にやっていこうと思います。
PunPunの理念はシンプルです。「お金に頼らず、どうやったら簡単に、自分たちで暮らせるようにしていくか」。How can you live easily? だからパーマカルチャーとかそういう理念は関係なくて、いっさい、ノーコンセプトなんですね。
質素ながら豊かな暮らしを実践する住人たちの村であり、ラーニングセンターがPunPun。家は自然素材(土、わら)で作り、食べ物を自分たちで育て(果樹、田んぼ、畑、にわとりの卵)、種を保存し、農家さんとのネットワークを構築し、シャンプーやジャムなどナチュラル加工品を作って販売して収入も得て、みんなが協力し合って生活する。今のメンバーは8ヶ月の赤ちゃんから、50代のおじさんまで、タイ人を中心に18人〜20人。ちょうど良い規模感のコミュニティーで、協力しあいながら暮らし、食と健康、自然素材の家作り、タイ人のための自立生活など様々なコースも企画・実施しています。
最近ますます注目が集まり始め、来年5月までは長期ボランティアは受け付けてませんが、ビジットしたりコースに参加してみるのは、いかがですか?日本人、まだまだ少ないと言っていました。
PunPunの種がどんどん広がって行きますように!
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