コスタリカのノサラ生活も3年目が終わろうとしています。毎年、少しずつこの地に根を生やし、生活も落ち着いてきましたが、今年、何より良かったのは、娘がシュタイナー小学校「星の家」に通い始めたこと。これまで通っていたインターナショナル・スクールが閉鎖され、公立の小学校に行かせようと思っていた矢先に、新しくこの街にシュタイナー学校がオープンしたということで見学にいってみたところ、すぐに気に入り、通うことに。手付かずのジャングルの中にある、こんな小さな学校です。
小学生1、2年生混合クラスで、生徒は10人ぐらい。
校庭は、、、、目の前の海!というなんとも贅沢な立地です。
砂浜には、みんなでガーデンを作ったそうです。「自分の場所」という意識が芽生えると、子どもたちは率先して、その場所に愛情をかけます。
教室には、自然素材の遊具や楽器、本などがいっぱい。
季節のテーブルは、子どもたちが全員で作ります。
トイレも、コンポスト・トイレ。 手作り感、満載で、とてもナチュラル。
ランチのあとのお皿も自分たちで洗います。
環境や立地、シュタイナー教育の哲学もそうですが、何といっても一番ありがたいのが、担任の先生。まだ若いコスタリカ人のカーラは、本当に熱心。先生は子どもたちを心から愛している。そして、子どもたちは先生を心から愛しています。子どもたちはコスタリカ人、アメリカ人、カナダ人、フランス人、スイス人、イスラエル人、日本人、、、と、それはまぁ国際色豊かの小さな地球。
穏やかなカーラは絵がとっても上手で、みんなの人気者。 こんな絵、チョークで書いてしまうなんて感動!
シュタイナー教育の哲学は、とても深く、既存の教育概念とはまるで違うマインドセットで私もまだ勉強中ですが、以下、メモ書きです。
★心(魂)の成長が、何より大切★ 娘は月齢的に言うと、今年3年生。でも学校は出来たばかりで、まだ2年生までしかない、、、。だけど一学年落としても試してみる価値あるかな、と思い切ってみることに。結果は、(今の所は)とても良かった!まず大きな変化は、「子供らしくなった」ということ。それまでは、なんとなくませていた娘ですが、勉学よりも、遊び、体験、心の成長!ということで、学力的には落ちたと思うけれど、毎日、お祈りして、歌って、踊って、手仕事して、自然をじっくり観察してという授業体験の中で、子どもの持っている純粋さ、可愛らしさ、はてまた精霊と交信する能力みたいなものに、もう一度、浸っている気がします。シュタイナー教育では、「学び急がず、できるだけ長くおとぎ話の世界にいさせてあげることが、大事」とされています。
娘が作った、妖精の家。妖精や森の精霊や太陽の神様や、、、目に見えない大切なスピリットたちのお世話をしたり、お手紙書いたり、彼らとつながる歌を歌ったり。義務教育の学びの中では、なかなか育ちにくい感覚をとても大切にしています。
シュタイナー教育の理念は、私もまだまだ学んでいる所ですが、子どもの心の発育段階に合わせて、ゆっくり歩みを進めるのが、一つの特徴。9歳ぐらいまでは、魂がまだふわふわしていてお母さんのお腹の中にいる延長だから、小学生になったからといって、いきなり暗記型の勉強の仕方を進めるのではなく、もっとやわらかい心に語りかけるような工夫がたくさんあります。
季節の移り変わりも大切にしていて、これは春分の日のセレモニー。
たとえば、9歳未満の子どもが「自分中心的な世界」に生きていると解釈されることについて、シュタイナーは「世界中心的」に生きている、と解釈する。7歳までは意識ではなく、身体のあり方そのものとして、「宗教的な帰依」と言っても良い関わりを世界に対してしているのだ。こうした子どものイメージは、現代人からすれば、退行的に美化されたロマン主義的な観念のように見えるだろう。だが、民俗学の資料には、日本人もかつては子どもを神的な存在として扱うという事例はたくさん見つかる。(駒澤大学教育学研究論集 第30号(2014年3月))
★社会性スキル★ 特に重点を置かれるのが、友達との関わり。どうやって対立を乗り越えていくか、言葉の使い方、態度など、逐一、先生と友達と話し合いを重ねながら、自分らしく、友達を尊重しながら、どう小さな社会を作っていくか、そのための自分の役割、感情のコントロールの仕方など、日本の学校では「喧嘩はしないで、仲良くしなさい!」と言うだけの所が、じゃぁ、実際どうやって?という部分をとても丁寧に育てていくのです。そのために既存科目の時間を削ってでも、じっくりゆっくり向き合っていくという姿勢が素晴らしいです。大きな宇宙、そこに浮かぶ地球に住んでいる私や友達、その中の私の役割というものに、たくさんの光を当てるのです。学期末に先生から頂く通知表には、「社会性スキルの発達」について長々と記述が!教育とは何かを、本当に考えさせられます。
★経験から学ぶ★ シュタイナー教育では、身体知を重んじていて、経験を大事に授業が進められます。例えば算数の授業では、体を動かすたくさんのゲームをします。なわとびや手遊びなどで数を感覚で覚えていく工夫です。九九も丸暗記ではなくて、簡単なボードを手作りし、それに毛糸をかけていって、数の増え方を身につけていきます。
確かに学力的には去年にくらべて落ちたけれど、そんなのあとからついてくるから大丈夫と思ってます。今は基礎の基礎。数字って何で、どういう風に日常生活に関わっていてという部分をとことんやることで、学力はあとからいくらでもついてくる、後半ぐんぐんと伸びるという考え方に賛成です。
ほかにも粘土(ビーズ・ワックス)や水彩画の授業などがあって、最初はアートスクールみたいだなぁと思いましたが、例えば粘土の授業では、手を動かしながら細かい形を作る忍耐力や創造性を育てるなど、それぞれにちゃんと裏付けされた意味があるようです。
★全てが芸術★ シュタイナーの学校は、授業が始まってから終わるまで、すべてが美しい芸術のよう。例えばヨガのクラスは、こんな歌から始まります。
The earth is firm beneath my feet, The sun shines bright above, And here I stand – so straight and strong, All things to know and love.
私の下には、しっかりと地球が広がり 私の上には、太陽が光り輝いています 私はまっすぐ力強く立って 大切な学びと愛を受け止めています
すべて一瞬一瞬が子どもたちの記憶に残るように、一つ一つの言動に心がこもるようにという教師たちの願いが、すみずみまで行き渡っていて、私も遊びに行くたびに、心がスーッとおだやかに豊かになるのです。そんな場所が学校、って本当に素敵!
そしてテストや成績表もないというのも、既存の学校とは大きな違い。そのかわり通知表は、18ページという長さ!しかも前期と後期のそれぞれにつき前半と後半に分けて綴られます。前述の「社会性スキルの発達」のほかに、各教科ー算数、国語(スペイン語)、英語、自然観察、農業、家庭科、ムーヴメント、水彩画、図形、ヨガーについて、それぞれ一人一人がどのような成長をしたり、課題があったりするか、細かく書かれています。先生の観察眼と愛情にただただ、脱帽。
★手仕事の大切さ★ 学校では、裁縫や編み物の授業もあります。どれもが「日常生活にすぐに役立つものを作る」ということで、宝物を入れるポーチや、ヨガマットをまとめておく紐など、いろいろなものを作っています。これも自分たちの生活を自分たちの手で作っていくという、独立した人間として生きるための教育。子どもたちの自信にもつながっているようです。
★観察眼を養う★ シュタイナー学校の進みは、とてもゆっくりです。決して、急ぐことはしない。それに情報量も、極力、削ぎ落とす。そのかわり、ある一つのことをじっくり見るという訓練をします。例えば「Naturales(自然)」という授業では、ある一本の木を毎週こりずに観察を続けてドローイング。一本の木と関係性を持ち、その木を通して季節を感じ、大地や太陽のパワーを感じられれば、それが応用されて次につながっていく、という考え方。
また毎朝、黒板の横に「絵の黒板」があって、毎朝、子供たちが来る前に先生がこっそりその絵に新たな何かを足しておく。子供たちは「間違い探し」のような感覚で、新しい絵を探すことを通じて、ちょっとした変化に気づく、じっくり観察するというスキルを身につけているようです。
去年まで、アメリカ系のインターナショナル・スクールで「地球市民」という授業を教えていた時は、とにかく伝えたいことがたくさんありすぎて、詰め込みすぎていた気がします。しかも「原因」と「結果」など、まだ低学年では難しいコンセプトも教えこませようとしていた気がする。そうではなく、削ぎ落とす。焦らずじっくり、「これはこうだよ」と教えるのではなくて、そもそも「ものの見方を教える」という教育です。
現代人は、子どもの時に人生を美しいと感じることを学ばなかったために、人生から何も驚嘆すべきものを見つけ出せなくなっています。これが 現代の特徴です。乾き切った仕方で何らかの知識内容を豊かにすることだけが求められています。けれども、いたる所にある隠された美を見つけ出すことができません。こうして人生との深い関係が失われます。人間と自然との深い関連を失わせるのが現代文化の営みなのです。(駒澤大学教育学研究論集 第30号(2014年3月))
★大人も一緒に成長★ シュタイナー教育にふれると、大人たちもためされる、日々が学びというのが面白いところ。一人一人の子供の発達に合わせて、語りかけ方や教える内容なども工夫する必要があり、自分の心の豊かさについても、日々精進が必要というわけです。
学校では、子どもたちが習っていることを深く知るために親たちも月一回の体験授業を行ないます。
とにかく毎日楽しい!学校行きたい!と目をキラキラさせて学校に行く娘の姿を見ていて、良い学校、良い先生に出会えて良かったな、と思っています。毎朝、馬で通学というのも、コスタリカに来た当初からの夢が叶い、嬉しい母と娘。
というわけで、2年生を終えたテラちゃん。しっかりと、「9歳の危機」も体験しながら(命ってどこから来たの?死んだらどうなるの?などの質問たくさん!)、のびのびすくすく世界のカオスも体験しながら育っています。8月からは3ヶ月、いよいよ日本生活!学校、どうしよう?いや、ホームスクーリング?それとも日本もシュタイナー学校に行かせるか?
欧米では、ホームスクーリング用の教材もたくさんあります。既存の義務教育でまぁいいか、、、ではなくて、子どもの最善を願いそれぞれに活動する親がとても増えています! ・Oak Meadows ....シュタイナー系のホームスクーリング用教材 ・Lavender Blue Homeschool...二人の子供のお母さんが作っているサイト。情報、たくさん!
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