NVC Family HEART Campに参加して
nvc(非暴力コミュニケーション)の意識が企画運営やプログラム内容全体に浸透していて、ほかのキャンプ・イベントとは一線を画したこのイベント。参加者は、総勢30家族、75人、一歳未満の子供からおばぁちゃんになるぐらいの歳の方まで老若男女。アメリカ人が多いけれど、私たち以外にも日本人、メキシコ人、ドイツや中国からの移民なども入り混じり、(近くにシリコンバレーがあるから、裕福な人が多いものの)世界のミニチュア版。とにかく、子供の多いこと!どんな境遇の人も、どんな感情も、開いた心であたたかく今のそれぞれを受け止め、自然の中で寝食をともにしながら暮らし支え合い学び合い、平和を実践する という、心から理想とするような一週間の共同体キャンプ体験でした。
オーガナイザー・チームから初日に提示されたのは、こんな問い。
how do you want to live & learn together? どうやってともに暮らし、学び合いたいか ?
ストラクチャーはほとんどなく、この問いを考えながらキャンプを作り出すのは、参加者次第。朝ごはんを済ませるころ、ドラムの音が森の中を鳴り響くのを合図に、みんなが rumi’s fieldと呼ばれる広場に集まり大きな輪になります。もちろん、子どもたちもみんな一緒。コミュニティーの集会の始まりです。歌や体を動かすゲームから始まり、コミュニティーの大切な決まりごと(一日目:safety 安全、二日目:trust 信頼、三日目:respect 尊重、四日目:connection )の話し合いが始まります。
例えば、一日目の安全。「◯歳の子どもたちは、ここから先へは立ち入り禁止」というような上から目線の画一的なルールは一切なく、nvcの理念で大切にされている「選択の自由」や「自主性」や「自己責任」を重んじ 、それぞれの家族で、親と子どもたちが安全のルールを話し合い、発表し合うという形式をとります。その方法にも工夫がこらされていて、「ライオン組は、どこでも自由に動く人たち(=大人など)」「トラ組は、ある一定の範囲内では自由に行動する人たち(=7歳ぐらいまでの子どもたち)」「クマ組は、責任ある大人などの目が行き届く範囲で行動する人たち(=7歳未満までの子どもたち)」など楽しく分かりやすい方法で、それぞれの安全性を確かめて、コミュニティー全体で共有していきます。こうしたほうが、「こうしなさい」と言われるよりも、ずっとずっと「自分がどうしたいか」を考える。(その能力がまだ低い子供達は、より良い選択ができるよう大人がサポートしてあげる。)
starts when it starts, ends when it ends (始まるときに始まるし、終わるときに終わる)という、なんともアバウトな時間帯もいい!
Happens when it happens, Whatever happens happens (何が起きれば起きるし、起こるべきことが起こる),,, 日本でこんなキャンプやったら、みんなついてこれるのか?
一日のスケジュールも、参加者の自主性に任されています。c.s.p. (community source programing)と呼ばれるスロットが、午前中に2コマ、午後に2コマ、夜に1コマあり、そこでどんな授業/オファリング/出し物をするかも、参加者次第。例えば、「子育てとnvc」「お金との関係性ワークショップ」「nvcヨガ」などといった大人向けの授業もあれば、「ドッジボール」「自然アート」「カードゲーム」のような子ども向けのプログラム もあり、朝のサークル後に行われる「マーケット・プレイス」でそれぞれが発表して、参加者は一日のスケジュールを自由に組み立てます。テントで昼寝したって、プールで泳いだって、気に入った人とじっくり会話を楽しんだって、何をしたって、子どもも大人もみんな、完全に自由!料理当番もしたい人がする。お金も出せる人が出す。そういう場所だと、自然と思いやりや自主性、自己責任感が生まれやすい気がする。(でも短期コミュニテイーだからこそ、気持ち良く過ごせるのもあるのかもしれない。必ずフリーライダーが存在するから)
私は、面白そうな授業に出てみたり、森の中にはったテントで、川のせせらぎを聞きながらたっぷり昼寝したり、日々瞑想やヨガを深めたり。自己責任、自由、好奇心。全て自分が、今ここでどうなのか、そこに深く結びつき、自分自身の自主性に任せて決めて生活していくだけ 。そしてお互いにそれを精一杯、尊重し、サポートする。誰かを批判したり、いらぬ責任を押し付けたりはせず、役割分担もその都度変わる。
小川沿いの、我が家。レッド・ウッズの中のキャンプなんて、最高〜!
娘は、同世代の子どもたちと一緒に、朝から晩までずーっと遊んでいました。私も今までのように「何時までにテントに帰ってきなさい」というような言い方はしない。それがとても難しいのだけれど、彼女がいい選択ができるよう、サポートしてあげる、あくまでも選択の自由を尊重するという姿勢を貫く。(もちろん親として求めていることやケアは、はっきりと伝えながら)
完全に自由で、心から尊重されて、どんな時も自分らしくいることをサポートしてもらえる環境にいると、人間って本当に本質に立ち返るというか、生き生きとするし、心底リラックスして、今まで葬っていた感情を見つめてみたり、世界を信頼しなおしてみたり、自分や世界とのつながりを確認しなおしてみたり。 最後のほうではやっぱり、ありとあらゆる感情が愛おしくて、涙が止まらず、いろいろなエネルギーが体の中を動いている感覚がありました。
でもこれって別に特別のことではなくて、普段から日常で感じていたい感覚。nvcって、ほんとにただ単にコミュニケーションツールではなくて、もっとずっと深い生きる哲学(参加者の一人は、「人生のコンパス」 と言っていた)でもあって、このキャンプは、日常のすみずみまで徹底的にnvcの意識を反映させたらどうなるかの実験場でもあったけれど、この感覚を持ち続けながら普段も生きていきたい、生きていける、と改めて確認したようにも思います。
キャンプにはnvc初心者(例えば、奥さんがはまっていて、旦那さんは初めて)という人も多かったけれど、そういう人たちも日が経つにつれて、脳みそが柔らかくなり、肩の力が抜けてくるのが見ていてとても微笑ましかったし、「さまざまな感情に気づく」 まずはそこからスタートだな、と思いました。あまりにもみんな忙しく、仕事やお金のこと、子どもの教育やしつけなどなどで、自分のセルフ・ケアができていない。常に外向きのことを整えること、社会で機能していくことに必死で、自分の心の中や核心がおろそか。そうした状況に気づき、軽やかに別の方向に自然と一歩を踏み出した、そんな人たちも目撃して、希望を感じていました。
夕方5時30分には、ふたたびrumi’s fieldに集まって、大きな輪になり、その日の「祝福」と「なげき」を誰からともなく出し合って聴き合います。アジェンダはなくて、みんなが感情のあるままを出し合うというだけ。特に、弱き声の子どもたちの発言が奨励され、キャンプ終盤にもなると、一つの大きな部族、真の家族のような一体感や安心感が芽生えてきていました 。ほんとにここでずっと暮らしていたい、いやこういう感覚を常日頃から自分が住む地域でも感じていたい、というような、、、
ただでさえ評判の悪いアメリカ人の中で、私は「peace comes from me」 と言うマントラを思い出し、これだけたくさんの仲間がいることに大きな希望を感じていたし、一年前のキャンプからの私の、そして娘の成長をひしひしと感じていました。needs yogaというnvcとヨガを組み合わせたクラスで私が選んだカードは、「祝福」と「サービス」。こんな場を体験できた身として、本当にありがたく、これから日本とコスタリカに帰国してワークショップなど始まりますが、培った愛と平和のエネルギーを、もっともっと広く大きな舞台で様々な人と分かち合いたい 、それが私の今のミッションだし、100%受け取った分、100%与えたい、という気持ちで今います。
how do you want to live & learn together? どうやってともに暮らし、学び合いたい?
この問いをこれからもいろいろな人と話し合い、平和を築いていきたいな。
世界中を、お互いがサポートしあい、平和を実践する場所にしてこう!