コスタリカ:自然素材の建築と塗装コースに参加して

2023年2月13日-20日の間、コスタリカの中部にあるRacho Mastatalで開催されている Natural Building and Plaster Intensive (自然素材の建築と塗装を学ぶ集中力コース) に参加してきました。実践も多く、とても学びが深いコースで、自分の家やコミュニティーの作り方にも大きな影響を及ぼしそう。この体験と知恵をたくさんの人たちとシェアし、仲間を増やしていきたいなぁと思い、備忘録としても残しておきます。

<端的にまとめると!>
自然素材の建築や塗装は、もちろん可能だし、世界的にもムーヴメントが来ている!そして日本の伝統的な建築方法は、世界的にも大注目です。古き知恵を進化させ、仲間たちと協同創造すれば、手間はかかるが、環境負荷は低く済む、そして楽しい!これぞつながりあう豊かな未来の暮らし方。

めちゃくちゃボリューミーになってしまったので、いくつかのポストに分けます。このポストでは、Rancho Mastatalの全貌についてと、自然素材建築とは何かについて。そして個別には、以下のポストにまとめてます。(ほんと素人なので、備忘録程度です!)

▶︎ 土壁の建築
▶︎ 天日瓦の建築
▶︎ 漆喰、床、屋根など
▶︎ コミュニティー(目に見えない大切な「ストラクチャー」)について 

Rancho Mastatal (ランチョ・マスタタル)とは

Rancho Mastatal は、コスタリカ共和国にあるパーマカルチャー 教育施設。施設内には、共同キッチンやダイニングスペース、それに30人ほどが滞在できる建造物があり、常時6名のコアメンバーによって運営されている自然共生生活を実践するコミュニティーでもあります。IGも頻繁にアップされているので、要チェック

こんな山奥にあり、場所がら、WIFIもなく、電話の電波もごくわずか。Reconnect to Connect. 常にインターネットにつながっている生活環境のリセットや、今後どう暮らしていきたいかを考えさせられる、外の世界から切り離された、古くて新しい未来があるような場所です、、、

広大な敷地内には、自然建築の建造物が色々と建っています。23年前、この地にアメリカからやってきた TimとRobinのカップルを中心に、少しずつ製作されました。建造物はコンクリートやプラスチック材はほとんど使わず、竹、土、石、ライム(石灰)、木材、タイルなどの組み合わせで作られたものがほとんど(屋根には鉄板やアクリル板なども使用)。どれも素朴で粗野な感じではあるけれど、自然に溶け込み、環境負荷を極力かけずに製作されたものばかりです。

 

私がステイしていたドミトリーの窓から、生徒の練習用の土壁パネルがある作業場エリアを見た眺め。何もないけれど、全てがあるような、安心できる場所。

敷地内にはコンポストトイレやオーガニック菜園が点在していて、もちろんパーマカルチャー のデザインは採用されているのだけれど、Rancho Mastatalは、どちらかというと、自然建築をメインに実践し、学びの場を提供しているトレーニング施設。少しずつ成長していて、特に北アメリカでも知られるようになってきているそう。(もう一つ、 Ranchoが大切にしている側面が「コミュニティーでの協同生活(Social Permaculture)」ですが、それはこちらのポストで

年数をかけ、徐々にデザインも洗練されてきて、見た目にも美しい建物が施設内に点在しています。数年前にやってきたパーマカルチャリスト、Kyle(カイル)によるワークショップで学んだこともたくさんあるそう!Kyleは、岡山県でパーマカルチャーセンター上籾(Kamimomi)を作っています。そうやって世界中から専門家を招いて、みんなで学び合う、つながり合うというスタイルがいいな、と思いました。

Rancho Mastatalでは、年間を通じて、パーマカルチャー デザインコースや、私が今回受講した自然素材の建築コース、木造建築のコース、アグロフォレストリー、ナチュラル・メディスン、NVC(非暴力コミュニケーション)など、1週間ほどの集中コースを実施。今は、発酵料理(キムチ、コンブチャ、お酢など)のコースを企画中だそうです。日本の仲間たちとも、何かできたら面白そうだな!

自然素材の建築とは

今回、受講したコースの説明です。名前の通り、自然素材の建築と塗装について学ぶ1週間のコースで、とても包括的で実践的、かつ本格的で超おすすめ。私の時は、Nic(ニック)と言う先生で、彼の知識量と情熱が半端なかった!

アメリカやカナダなど西洋でも知られるようになってきているコースで、その界隈からの参加者も多かった。実際に土地があって家を建てようとしている人から、野心あふれる若者ヒッピーまで、みんなすごく熱心ですぐに打ち解けられる仲間たちでした。このつながりが希望!

自然素材の建築って何?

まず自然素材の建築って何?という話しから。定義はなく、できるだけその地域で採取された持続可能な素材を使い、ローカーボン、ローインパクトで制作された家のこと。リサイクル、アップサイクルも含まれる。完璧というわけには行かないので、どこをトレードオフのポイント(妥協点)にするか。状況によって異なる。

コンクリートは耐久性や維持のしやすさについて考えると、確かにいい素材ではある。でも製造の過程で多大な熱量が必要(1400℃)だし、言ってみれば呼吸しない「死んだ素材(dead material)」リサイクルも難しい。世間一般的には、建造物といえばコンクリート!何が悪いの?と言う風潮があるかもしれないけれど、Ranchoでは真逆で「コンクリート?絶対、使わないでしょ」と言う空気だったのが、面白かった。(それでも、床や濡れやすい場所など、一部のストラクチャーでは使用する。適材適所ですね。)

余談だけど、"Wizard and the Prophet (魔法使いと予言者)"と言う本が紹介されていた。Wizardは「生産や消費量を減らそう。Cut back! 」と叫び、Prophetは「科学を発展させよう。Innovation!」と叫ぶ。さて、人類の進化の道は?新しいテクノロジーの発展と導入なのか、足るを知る昔ながらの暮らしに戻っていくことなのか。未来は、一人一人の倫理観やニーズによる選択にかかっています。

 

様々な素材について

今回のコースは、家の枠組みと言うよりも、床や壁などの作り方がフォーカスされていました。(家の枠組みについては、木や竹、鉄を使用。それにはまた別のコースが用意されています。Ranchoで新しい建造物を作る時に、またコースにして学びながら実際に建てる、と言うスタイル。日本でもそうやって作りたいなと思いました!)

土壁や土の床に使用する基本的な素材は、以下の3つ。

1. バインダー(粘土質の土など)
2. 砂利や岩(骨材?と言うのかな aggregate)
3. 藁などの繊維(なくてもいいけれど、強度や軽量化に良い)

一つずつ簡単に説明すると:(いやぁー こんな基本的なことまで、まるで知らなかった)

▶︎バインダー(粘土質の土など)
全ての素材をくっつける素材のこと。大概は粘土。建築サイトにあるかどうかのテストをする必要がある。コースでは石灰(ライム)も使用しました。(ライムが自然素材かどうかと言うのは、議論の余地がある)

 

▶︎砂利や岩の例
砂や小石(英語では、aggregateと言う)は、土壁や床のメインになる素材。現地から調達できるのが望ましいけど、ホームセンターのようなところから、砕いたものを購入可能。海にある砂は丸すぎて、引っかかりがないのでだめ。ちなみに日本の漆喰(海外でも、SHIKKUI と固有名詞になっています)は、消石灰(ライム)に、繊維質のわらや麻糸などと、糊(のり)を加えて水で混ぜたもの。

 

▶︎ 藁などの繊維質の例
干し草、わら、バナナやココナッツの繊維、馬の毛など。素材をつなぎとめたり、強くしたりするのにオプションで使う。素材の軽量化や断熱効果も。日本だと稲わらがたくさん手に入りそうですね。その土地ごと、気候ごとに何が望ましいかを見分ける。

 

というわけで、粘土質のもの、砂利類、オプションとして藁。基本的にはこれら3つの素材を、壁とか、床とか、適材適所の配合ごとに混ぜ合わせるだけ!え?かなり簡単すぎませんか?これなら、できるって思ったよ。配合の割合は、こちらを参考に。

世界中の自然素材や建築の例

コースでは6つの班に分かれて、別々の自然素材についてリサーチ、最終日に発表を行なうこともしました。いろいろあるけれど、基本的には上記の3つの素材(粘土質、砂や石、繊維質)を混ぜ合わせたものでできる。まぁそうやって何万年も前から人は建造物を作って、暮らしてきたんだなぁー。

1. Straw Bale
ストローベイルとは、主に家畜飼料用につくられた藁を圧縮したものを、ロープで結んだ長方形の藁ブロックのこと。 Straw Bale Houseとは、そのブロックを積み重ねてつくる建築工法。日本ではあまり見ないのかな?断熱性に優れていて、軽く、特に北アメリカではたくさんのストローベイルハウスがあります。

 

2. Cob
コブとは、砂、粘土、藁(わら)を混ぜたもの。世界最古の建築素材とも言われる。曲線を描くような自然素材建築らしいフォルムは出るけれど、「目の保養的」とニック先生はあまり進めていませんでした。とにかく時間がかかって、大変だからだそうです! 

3. Adobe 
これもCobと変わらないけれど、天日ぼしにしてレンガ状のものを作り、それを積み上げて作る。コースでも実際にベンチを作った。詳しくは、こちらのポストにて

4. Rammed Earth
こちらもCobやAdobeと同じ材料だけれど、砂質の混合物を、硬い砂岩のような材料を圧縮する構造構築法。コスタリカで今、フランス人の友達がこの方法で、ものすごいモダンな家を作っている。


5. ヘンプクリート
ヘンプの麻幹(オガラ:ヘンプの木質部)と石灰とを混ぜ合わせ、ブロック状に成型したもの。 世界中で注目を浴びる麻幹を使用したコンクリート。知り合いが経営するコスタリカのリトリート施設の壁は、ほぼヘンプクリートを採用。すでにいろいろ始まってるし、ヘンプクリートは今後も要注目の素材。日本の現状はどうなんだろう?

それ以外にも Light Straw Clayとか、プラスチックボトル(ゴミ)やタイヤを使ったもの、アースバック建築など、自然素材を使った建材の方法は、あたりを見渡してみると、いろいろある。

コースを経ての、今後の私の方向性

いやぁー、自分がどんな風に家を建てるかとか、どんな家に住むのが理想だとか、その家を自分たちで造るとか、どれくらいの環境負荷があるかとか、真剣に考えてこなかったけど(というか、今、コスタリカで家を建てる準備をしているけれど、建築家と建設会社に頼むという、これまでのスタイルにおさまっている、、、)、自然素材の建築って、全然可能だし、そのほうがいろんな意味で豊かだなぁ、と感じずにはいられませんでした。

そしてコースでは10分に一回ぐらい(本当に頻繁に!)日本の伝統的な建築方法についても語られていました。「この間、KOMINKA FESTIVALに参加してきたのよ。日本の古民家は、現在、空き家が80万件。この5年間で、25万件が壊されている」とアメリカ人に教えられる、、、いやぁー日本の伝統とまだ残る職人技は、本当に深くて素晴らしい、、、

*古民家再生などに一躍、かっている海外の人たち。
Dylan Iwakuniさん、すごい
Alex Kerr 


というわけで、私の今後の活動としては、、、

・コスタリカで建築予定の家の一部を、自然素材の要素を入れてできないか、検討中。

・ゆくゆくは日本でパーマカルチャー に根差したコミュニティーに参加するか、自分たちで創造したい。そのため2023年夏から、場所探しに入る。サーフィンできる海のそばで、古民家がある里山的な暮らしを味わえる広い敷地をご存知の方、情報求む!

という感じで続けていきたい。コースに参加して、インスピレーションをたくさんもらったし、このエネルギーを持続させていきたいなと思っているので興味がある方、一緒にやりましょう!

そしてコースの備忘録は、続く、、、

▶︎ 土壁の建築
▶︎ 天日瓦の建築
▶︎ 漆喰、床、屋根など
▶︎ コミュニティー(目に見えない大切な「ストラクチャー」)について 


余談ですが、、

私は福島原発事故と震災後、日本を離れ、2012年5月〜2013年3月までの10カ月間、タイのパーマカルチャー・ファームに暮らしていました。薪を割って火を焚き、自分の家も建てるような素朴で質素な暮らしで、それはそれは学びが多かったんだけど、人生はひょんな流れでコスタリカへ。それから現在までちょうど10年。新しい仕事や生活を作っていくのに、必死だったなぁ〜と振り返っています。

今回のコースに参加したのがきっかけになって、持続可能な暮らしを本格的に再開するきっかけになるような予感がしています。いずれにせよ、タイ生活の時のブログが、かなり懐かしく、その当時のエネルギーを思い出させてくれたのにで、ここにもシェアしておきます。

タコメパイでの暮らしの始まり
自然のものだけでコンポスト作り
コミュニティーでの暮らし
THE NEW LAND
福岡正信式、粘土団子の作り方
SURVIVAL IN THE JUNGLE
はじめての家づくりと自然素材の家暮らし
田植えが始まりました
Permaculture Design Course 1
Permaculture Design Course 2
Food Meditation
幼稚園で野菜ばたけ始めました
Mindful Farmへ
Night in the Jungle 森の中での週末
木を植える男
パイに学びに/遊びに来ませんか?
ジャングルの中に畑作り
マインドフルネス・プロジェクト
Panya and Punpun in Chiang Mai, Thailand

 

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